堅果類豊凶調査

ブナ科堅果類豊凶調査

クマの出没とその予測

 ツキノワグマ(以下、クマ)は本州、四国の森林に生息する大型の哺乳類です。雑食性で、季節によって若葉や昆虫、動物の死骸など様々なものを餌としますが、冬眠前の秋期は主食となる木の実を求めて行動範囲が広がるため、人里への出没が増加します。
 こうしたクマの人里への出没には大きな年変動があり、大量出没年には人身被害件数も増加し社会問題となります。木の実が不作の年は、クマが食べ物を求めてより長い距離を移動することが大量出没の一因として考えられています。特にこの時期の主食であるドングリ(堅果(けんか))をつける木の生り具合は、樹種によっては広い範囲で同調するうえ大きな年変動を示すため、クマの出没に大きく影響すると予想されます。
 そこで自然保護センターでは2005年から夏期にブナ科樹木の堅果類の生り具合をモニタリングすることで、秋の大量出没の事前予測を行っています。

調査の概要

 ブナ科樹木3種(ブナ、ミズナラ、コナラ)を対象に県内約40地点において双眼鏡を用いて目視で堅果の生り具合を調査しています。あらかじめ定めた基準に従い対象木一本一本の作柄を凶作から豊作まで6段階で評価します。
 できるだけ早くクマの出没傾向を予測できることが理想的ですが、調査時期が早すぎるとドングリがまだ小さいので調査が難しく、その後の昆虫による害や気象などの影響を加味できないため誤った評価結果になる可能性が高くなります。このため例年お盆前後から調査を開始しています。

ブナ林での調査のようす

ブナ林での調査の様子

双眼鏡で対象の木の枝先についているドングリの数をカウントします。長時間高い木を見上げての調査は首がつらく、なかなか大変です。

コナラの堅果
コナラの堅果
まだ緑色ですが、すっかりドングリらしくなっています。
ミズナラの堅果
ミズナラの堅果
未熟なためドングリ本体はまだ殻(殻斗(かくと))から露出していません。
ブナの堅果
ブナの堅果
イガイガの殻斗の中には通常2つの堅果が入っています。豊凶は広い範囲で同調し、年による変動が著しい樹種です。

これまでの調査から分かること

秋期のクマ出没頭数と密に着果した個体の割合

 図は、2005年から2014年の県内全域の9~12月のクマの出没頭数と各堅果類の豊凶(対象木のうち密に着果した個体の割合)を照らし合わせたものです。2006年、2010年、2014年は出没頭数が400頭を超える大量出没年となりました。それ以外の年は50頭以下と比較的少なくなっていました。各樹種のドングリが多く実った木の割合を見てみると大量出没年はブナとミズナラがそろって凶作の年と重なっていることが分かります。ブナやミズナラは涼しい山に多く分布する樹種であるため、山地での餌不足がクマ大量出没の引き金となったと推察できます。
 自然保護センターでは、今後も人里での秋期のクマ大量出没予測のために堅果類調査を継続して行っていきます。